フレイルとは?意味や原因、予防のために家族ができる3つのポイントをご紹介

フレイルとは?意味や原因、予防のために家族ができる3つのポイントをご紹介

2020年4月から、75歳以上の後期高齢者を対象にした「フレイル健診」が始まりました。

フレイルとは、健康な状態と介護が必要な状態の中間を指します。
もし、ご両親がフレイルだとしても、この段階で対策すれば、要介護状態になるのを防ぐことにつながります。
そのため、「フレイル予防」の大切さに注目が集まっているのです。

フレイル予防に必要なのは、「運動」「食事」「社会参加」の3つです。
この記事では、「フレイルとは何か」「フレイルかどうかを調べる方法」「フレイル予防のために家族ができること」をご紹介します。

フレイルとは、介護が始まる手前の状態

フレイルとは、「介護が始まる手前」の状態のこと

フレイルとは、老化に伴っておきる心身の機能低下や、栄養状態の悪化が進んでいる状態を指します。
健康とはいえないものの介護の必要はない、そういう状態です。
語源は英語の「Frailty(虚弱)」で、「日本老年学会」が2014年に提唱した概念です。

東京都健康長寿医療センター研究所が2020年に発表した調査(※1)によると、65歳以上の高齢者のフレイルの割合は8.7%、プレフレイルは40.8%となっています。
また、高齢になるほどフレイルの割合は高くなるとも分析しています。

※1東京都健康長寿医療センター研究所 プレス資料より
https://www.tmghig.jp/research/release/cms_upload/20200903.pdf

2020年4月からは後期高齢者を対象にフレイル健診が始まるなど、「フレイル予防」にも注目が集まっています。
なぜ、フレイルの予防が必要なのでしょうか?

フレイル予防は要介護状態になるのを防ぐことにつながる

フレイルかな?と思ったら、15の質問でチェックを

2019年に行われた国民生活基礎調査によると、要支援または要介護と認定された人が、要介護状態になった主な理由のうち「高齢による衰弱」が全体の12.8%(※2)を占めるとの結果がでています。

この「高齢による衰弱」とは、フレイルのことです。
つまり、フレイル状態になると要介護状態に進行する可能性があるということ。
そのため、フレイル予防が大切なのです。

介護が必要な状態になってからリハビリなどを行うのではなく、その一歩手前のフレイルの段階で気づいて対策ができれば、高齢者本人の身体的負担を減らすこともできるでしょう。

では、ご両親が今「フレイル」の状態にあるかどうかを、どのように判断すればよいのでしょうか?

※2厚生労働省『2019年国民生活基礎調査の概要(p40)』より
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa19/dl/14.pdf

フレイルとはどんな症状から始まる?フレイルかを判断する15の質問

フレイルかな?と思ったら、15の質問でチェックを

フレイル健診では、15項目の質問に回答いただき、高齢者それぞれの特性などを考慮しながら、総合的に把握するという方法で判断されます。

質問票の内容は、以下のとおりです(※3)。

質問票の内容について

このフレイル健診は、75歳以上の後期高齢者の方を対象にしたものです。
ご家庭では、こちらの質問票を参考に、ご両親の状態をみて差し上げてください。
気になることがあれば、かかりつけ医に相談したり、次にご紹介するフレイル予防を参考にしたりするなど、対策をとるようご検討くださいね。

※3 後期高齢者の質問票の解説と留意事項P2より抜粋
https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/000544671.pdf

フレイルにならないために、ご家族ができること

フレイル予防は、運動・食事・社会参加がポイント

フレイルには、低栄養やサルコペニア(筋力・筋肉量の減少)、口腔機能低下などの「身体的要素」、さらには認知症やうつといった「精神・心理的要素」、閉じこもり、孤立など「社会的要素」の3つが関係するといわれています。

フレイルにならないよう心がけたいのが、「運動」「食事」「社会参加」の3つです。ご家族として、どのようなサポートをして差し上げられるのか、考えていきましょう。

フレイル予防のために心がけたい3つのポイント

運動

まず必要なのは、体操など、体を動かす習慣をつけることです。
簡単なことでよいので、ご両親が楽しみながら続けられることを提案して差し上げてください。

【簡単な運動の例】

  • 手すりなどにつかまって、つま先立ちや片足立ちをする
  • 近くの目的地(公園やお友だちの家など)まで散歩する
  • 寝る前に簡単なストレッチをする

お一人でやるのが難しそうなときは、ご家族が「一緒にやろうよ」とお声がけするのも、おすすめです。
また、高齢者のための体操メニューを地域で独自に作って広めているところもあります。

食事

栄養をしっかりとる

たんぱく質や炭水化物、ビタミン類をバランスよく摂取するなど、栄養面を考えた食事をとることが大切です。
中でも、フレイルを意識する場合に注目したい成分が「たんぱく質」。
高齢の方は食が細くなり、あっさりしたものを好まれることも多く、たんぱく質が不足しがちです。
ご両親に、市販のお総菜や栄養補助食品などの活用をご提案いただくこともサポートのひとつになります。

また、一人で食べるのではなく、家族や友人と一緒に“楽しく食べる”ということは、心身の健康に役立つともいわれています。
“栄養をとる”ということだけではなく、楽しく食事をとるという点を意識していただくことも大切ですね。

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食事をとるため口腔ケアを行う

食事をとるために口腔機能を維持することは、とても重要です。
固いものが食べにくくなったり、食事のときにむせるようになったりするのも、口腔機能低下のあらわれといわれています。
これらを防ぐためには、「ていねいに歯磨きする」「しっかりかんで食べる」「あいさつしたりおしゃべりしたり、口を動かす」などを、ご両親に意識していただくことが、大切です。

社会参加

スポーツサークルや趣味の活動、ボランティア活動などに参加するのは、とてもよいことですね。
民生委員や社会福祉協議会などの団体が、地元の高齢者が参加しやすいサロンやイベントを定期的に実施していることもあります。

新しいお友だちができたり、世代を超えた交流の機会が増えたりすることが刺激になるという方も多いです。
社会参加が増えれば自然と体を動かすようになり、食事もおいしくいただけるという、よい循環も生まれます。

ぜひそうした機会が増えるよう、ご両親が興味をもってくださるような活動を探すなどのサポートをして差し上げてください。

最後に

フレイルという言葉や考え方が知られていなかった頃は、「もしかしたら認知症では」「体が弱ってきているかも」など、ご家族が気づくのは難しい状況でした。

しかし、ようやく日本でも2020年から後期高齢者のフレイル健診が始まり、フレイル予防の大切さが広まっています。

フレイル予防は、ご両親が要介護状態になるのを防ぐことにつながります。
つまりそれは、ご両親の健康寿命が長くなるということにも、大きくかかわってきます。
人生100年時代と言われている現代。フレイル予防を行うことで、大切なご両親に、いつまでも健康で元気に暮らしていただきたいですね。

もしもご両親に「これってフレイルなのでは?」と心配になる症状やご様子がみられたら、かかりつけ医に相談してみましょう。
ご家族だけでフレイル予防をすることが難しいときは、自治体や地域の医療・介護サービスなどの専門家に相談するという選択もあります。

最近では、病院や施設、地域が主体となった、フレイル予防の活動も増えています。
家族が情報交換したり交流したりする場もたくさんありますので、ぜひご活用ください。

記事協力:医療法人財団緑秀会 田無病院 院長 丸山道生

「ソラストオンライン」2020年7月より出典
https://www.solasto.co.jp/company/solastoonline/toprunner-2.html

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