2024.02.01

介護保険サービスの種類・特徴・施設の探し方を解説|要介護者が望む生活実現がポイント

介護保険サービスの種類・特徴・施設の探し方を解説|要介護者が望む生活実現がポイント

「介護保険サービス」は、2000年にスタートした介護保険法のもと、市区町村が実施する要介護認定において「介護が必要」と認定された65歳以上の人が利用できる公的サービスです。

「介護保険」で利用できるサービスは、大きく分けると、自宅を拠点とした「居住系」サービスと、介護付き有料老人ホームなどの「施設系」サービスの2種類があります。加えて、住み慣れた地域で、認知症高齢者や介護度が高い人が生活を継続するための「地域密着型」サービスも注目されています。

今回は、記事を読むだけではなかなか理解しづらい「介護保険サービス」を分かりやすく解説します。「将来、自分(親)が自宅で過ごすのが難しくなったとき、どのように生活していくことができるか。どう生活していきたいか」を念頭に、この記事を読んでいただければ幸いです。

介護保険制度とは

はじめに、介護保険制度の基礎知識について簡単に見ていきましょう。

介護保険制度の概要

総人口に占める65歳以上の割合が14%を超えた社会を「高齢社会」といいますが、日本において、65歳以上の人口が2,187万人、高齢化率が17.2%に突入した2000年4月、介護を社会全体で支える仕組みとして「介護保険制度」がスタートしました。

「介護保険制度」は市区町村(保険者)が主体となって運営する制度です。原則として、市区町村の住民基本台帳に登録がある40歳以上のすべての人が介護保険に加入し、介護保険料の支払い義務が発生します。

介護保険サービスが受けられる人(被保険者)

介護保険の被保険者は40歳以上の人ですが、年齢に応じて以下の2つに分かれます。

  • 40歳以上64歳以下の人…第2号被保険者
  • 65歳以上の人…第1号被保険者

このうち、介護保険サービスを利用できるのは65歳以上の「第1号被保険者」で、市区町村から要介護(要支援)の認定を受けた人です。

40歳から64歳までの「第2号被保険者」は、初老期における認知症や脳血管疾患など16種類の特定疾病が原因で、要介護(要支援)の認定を受けた人に限ります。

介護保険サービスの利用料

介護保険サービスを利用した場合の利用者負担は、原則としてかかった費用の1割です。ただし、所得に応じて2割または3割負担となることがあります。また、各市区町村に設定された地域別の上乗せ分が、施設所在地によって適用されます。

利用者負担以外には、居住費(家賃相当額)や食費などがかかります。施設によって細かい規定、金額が公表されています。自宅を拠点とした居宅サービスで介護保険サービスを利用する場合は、要介護度別に支給限度額が決まっています。

特定施設入居者生活介護

「特定施設入居者生活介護」とは、特定施設に入居している要介護者を対象にした、日常生活上の世話、機能訓練、療養上の世話のことで、介護保険の対象となります。

施設の分かりやすい見分け方としては、同じ有料老人ホームでも頭に「介護付き」とある場合は、都道府県または市区町村に「特定施設入居者生活介護」の指定を受けているホームです。一方、「介護付き」と頭についていない有料老人ホームは指定を受けていませんから、介護保険サービスの提供はありません。

また、通常「サービス付き高齢者向け住宅」や「住宅型老人ホーム」が提供するのは、見守りサービス(安否確認、生活相談)をはじめ、施設によっては食事の提供、掃除などの生活支援サービスです。しかし、中には「特定施設入居者生活介護」の指定を受けている施設もあり、その場合は「介護付き有料老人ホーム」と同様、介護保険サービスも受けられます。

参考:介護保険の解説 | 介護事業所・生活関連情報検索「介護サービス情報公表システム」

介護保険で利用できるサービス

被保険者が利用できる介護保険サービスの内容は、大きく分けると、自宅を拠点とする「居宅サービス」と、施設を拠点とした「施設サービス」のどちらかで異なります。

また、2006年の介護保険制度改正により、認知症高齢者や介護度が高い人が、住み慣れた地域で生活を継続するための「地域密着型の施設・特定施設型サービス」(小規模多機能型居宅介護)も加わりました。

ここでは、それぞれのサービスの特徴を解説します。

自宅を拠点とした居宅サービス

居宅サービスは、自宅で生活しながら受けられる介護保険サービスで、主に以下のようなサービスがあります。

  • 居宅介護支援(ケアプラン作成)
  • 訪問サービス…利用者の自宅に訪問介護員(ヘルパー)が訪問して提供するサービス
  • 通所サービス…デイサービスやリハビリテーション施設などに被保険者が通って受けるサービス
  • 短期入所サービス…短期間、介護老人保健施設(老健)や医療施設に短期入所して受けるサービス
  • その他のサービス…車椅子や特殊ベッドのレンタル・購入、住宅改修費支給

居宅サービスは、利用できるサービスの量(支給限度額)が要介護度別に決められています。それを超えて介護保険サービスを利用する場合は自費となるため注意が必要です。

特定施設入居者生活介護の指定を受けた施設を拠点とする施設サービス

施設サービスは、前述したような「特定施設入居者生活介護」の指定を受けた施設で生活しながら受けられる介護保険サービスです。主に以下のようなサービスがあります。

  • 介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)、介護老人保健施設(老健)、介護療養型医療施設、介護医療院の施設サービス費
  • 介護付き有料老人ホームなどで、利用者の希望や身体の状態を考慮して作成したケアプランをもとにした食事や入浴、排泄など日常生活上の支援、機能訓練など

小規模多機能型居宅介護

小規模多機能型居宅介護は、2006年の介護保険制度改正によって新しくできた地域密着型のサービスです。

それまでは、自宅で介護サービスを受けながら生活する場合には、ヘルパーによる訪問サービスを受けたり、デイサービスに通ったり、時々ショートステイを利用したり、サービス内容によって提供する事業者がバラバラでした。しかし、小規模多機能型居宅介護の創設により、1つの事業者が提供する「訪問」「通い」「泊り」のすべてのサービスを希望に応じて受けられるようになりました。

認知症の方にとっては、介護サービスを受ける場所や介護スタッフが変わるなどの環境変化はあまり好ましくありません。小規模多機能型居宅介護の場合は、どの介護サービスを利用しても同じスタッフが対応してくれるので、安心感が大きく、人気の高い施設のひとつです。

ただし、名前の通り小規模施設のため、一度に利用できる人数は限られてしまいます。

要介護認定の申請からサービス利用までの流れとポイント

介護保険サービスを受けるためには、市区町村へ要介護認定(要支援認定)の申請をしなくてはなりません。

ここからは、介護サービスを受けるための申請から利用までの流れとポイントを解説します。

介護保険サービスの申請手続きの概要

介護保険サービスを利用するには、市区町村や地域包括支援センターに要介護認定(要支援認定)の申請をしなくてはなりません。その後、認定調査などを経て、要介護度(要支援度)が決定します。

認定後は、心身の状態、本人・家族がどのような生活を希望するかなどのヒアリングが実施され、居宅介護事業所の介護支援専門員(ケアマネジャー)が介護サービス計画書(ケアプラン)を作成します。そして、計画にもとづいた各種介護サービスの利用がスタートします。

【ステップ別】要介護度認定までの流れ

要介護認定までの流れをステップで簡単にまとめると以下のようになります。

(1)要介護認定の申請
市区町村の窓口で要介護認定の申請を行います。65歳以上の第1号被保険者は、申請時に「介護保険被保険者証」が必要です。

(2)認定調査・主治医意見書の提出
市区町村などの調査員が実際に自宅や施設を訪問して、心身の状態を確認します。主治医意見書は原則として主治医に依頼しますが、主治医がいない場合は市区町村の指定医の診察を受けます。

(3)審査判定
調査結果と主治医意見書をもとに、全国一律の方法で要介護度が一次判定されます。その結果と主治医意見書にもとづいて、市区町村に設置されている介護認定審査会による二次判定で最終的な要介護度が判定されます。

(4)要介護度認定
市区町村から、決定した要介護度が通知されます。認定は、要支援1・2から要介護1~5の7段階または非該当のいずれかです。また、申請から認定までは原則として30日以内です。

介護サービス計画書(ケアプラン)作成

一般的に、認定通知とともに、市区町村から居宅介護支援事業者のリストが渡されます。そのリストの中から希望する事業者を1つ選び、市区町村から指定を受けた介護支援専門員(ケアマネジャー)に介護サービス計画書を作成してもらいます。

なお、事業者の施設にも介護支援専門員はいますが、入居にあたっては要介護度が認定されていることが前提になるため、介護認定を経ずに施設の介護支援専門員に直接、計画書作成を依頼することはできません。

しかし、要介護認定の結果が出るまでには30日程度かかるため、認定結果が出る前であっても要介護認定の効力は申請日に遡りますので、介護支援専門員に申し出て暫定的な介護保険者証の交付を受けると、サービスを利用できる場合があります。ただし、認定の結果が「非該当」の場合は全額自己負担となってしまいますので注意が必要です。

介護保険サービス利用開始

介護サービス計画書(ケアプラン)の作成後は、その内容に沿って、自宅または施設で各種介護保険サービスの利用を開始します。

参考:サービス利用までの流れ | 介護保険の解説 | 介護事業所・生活関連情報検索「介護サービス情報公表システム」

もしかして介護が必要かも!?そんなときに知っておくと役立つ情報

ここまで、介護保険サービスが受けられる施設の特徴や、要介護認定の申請の流れなどを見てきました。

しかし、中には「手続きの概要は分かったけれど、自分や家族が要介護状態になったとき、実際にはどのように注意して行動すればいいのだろう…」と不安に思われる方もいらっしゃることでしょう。

内閣府発表の「令和5年版高齢社会白書」によれば、要介護または要支援の認定を受けた人は2020年度で668.9万人と、2010年度の490.7万人から171.8万人も増加しています。介護サービスは特別なことではなく、誰にとっても身近なものになっているといえるでしょう。

そこで、自分や家族が介護保険サービスを受けようとする際、知っておくと役立つ情報を、ソラストに在籍しているケアマネジャーがQ&A形式でご紹介します。

参考:令和5年版高齢社会白書(全体版) - 内閣府

そもそも介護に関する情報はどこで集めればいいの?

介護保険の第1号被保険者である65歳になった時点で、被保険者にはいろいろな案内が送られて来るようになります。このタイミングで、自分や家族が元気なうちに、いつでも相談できる場所をいくつか見つけておくといいでしょう。

例えば、市区町村の高齢福祉課の窓口に「将来のために介護認定について詳しく知りたい」「元気に暮らせているが健康状態でちょっと不安」と相談するなど、行政との接点を作っておくことをお勧めします。相談したことは記録として残るので、いざ要介護認定の申請をするときに話を進めやすくなります。

なお、ソラストでは各支援事業所にご相談いただければ、要介護認定申請の手順をご説明することもできますので、お気軽にご相談ください。

認知症が進んだ親が老人ホームへの入居を嫌がるときの対処法は?

要介護度のない人が「1人で暮らしているのが不安だから…」と自宅を処分して有料老人ホームに入居されるケースもありますが、ソラストの施設に申し込みをされる方の多くは、ご家族が「自宅での介護が難しい」と判断しているケースがほとんどです。

特に認知症を患っている方は、ホーム入居後に「なぜここにいなきゃいけないんだ」という気持ちを抱きがちです。本人が自宅に戻りたくても、戻るのが難しい状況であることを理解していただくのは、非常に難しい状況です。

しかし、なだめるために、その場しのぎのウソをついてしまうと、それからずっとウソをつき続けることになってしまいます。そのため、ソラストでは、入居が必要な状況を理解いただけるよう、繰り返し丁寧な説明をするように心がけています。

要介護認定調査の日は俄然元気になり、正確な判定をしてもらえないときは?

認定調査員が自宅や施設を訪問した際、判定を受ける本人に「訪問者をしっかりお出迎えしたい」「家族以外に自分が衰えている姿を見せたくない」といった気持ちが生じるためか、普段はできないことができたり、とても調子が良かったりすることがあります。

その結果、普段の様子を見ている家族などからすると、予想以上に要介護度が低く判定されてしまうケースが見受けられます。こうした事態を避けるにはどうすればいいのでしょうか?

対処法としては、認定調査には家族が同席するようにして、普段から具体的に何ができているか・できていないかを調査員に詳しく伝えて、特記事項に書いてもらうといいかもしれません。認定調査では、人それぞれの状態を細かく把握する必要があるため、判断材料が多くあることで結果的にスムーズな調査が行える可能性があります。

注意が必要なのは、あくまでも正確な心身の状態を客観的に伝えることです。感情や主観で説明するのではなく、普段から具体的な行動をメモに記録しておくなどして、事実をきちんと伝えるようにしましょう。

なお、判定結果に納得がいかなければ、申請し直すことも可能です。

相性が悪いケアマネさん。担当を変えてもらうことはできる?

人と人との関係にはどうしても相性があるため「このケアマネジャーさんとは相性が悪いな…」と感じた場合には、担当を変えることも可能です。

人情的に「一度担当してもらった人を変えると、不利な状況になってしまうのでは…」などと不安を感じる人もいらっしゃるかもしれません。しかし、心にわだかまりがある状態では円滑なコミュニケーションができず、結果的に適切な介護サービスを受けられなくなってしまうかもしれません。

そのため、事業所に複数のケアマネジャーがいる場合には、担当者を変えてもらえるか相談するか、それが難しければ事業所を変えることも可能です。

施設事業者が大切にしている介護への思いとは?

介護施設を運営する事業者がどのような思いで介護サービスを提供しているのか、利用される本人や家族にとって最も気になる点でしょう。

ソラストでは、介護保険サービスを受ける利用者様、そしてご家族が「この先どのような生活を望んでいるか」、その思いを承ることを大切にしています。

もしも、施設に入居された方が「もう在宅での介護は難しいかもしれない…」という状態だったとしても、ご本人が「自宅で過ごしたい」と希望されるのであれば、施設では、自宅に戻って生活できるように、リハビリを中心としたケアプランを立てて希望をサポートします。

また、介護をされているご家族のお気持ちにも目を向けています。一生懸命に自宅で介護をし続ける中で、場合によっては、介護に疲れてストレスを抱えてしまうこともあるでしょう。ただ、自宅での介護にも限界があるため、ご家族の中だけで抱え込まず、施設にお預けいただくことも方法のひとつです。

介護を一生懸命に頑張ってご家族が嫌な顔や怒った顔をするくらいなら、私どもの施設にお預けいただいて、お疲れになっていない状態の良いお顔で面会に来ていただけたらいいなと思います。利用者様やご家族が「笑顔になっていただくこと」が、私たちスタッフの一番の願いです。

「これから先、どんな生活をしたいのか?」を考えるのが、介護の初めの一歩

介護保険サービスは、要介護者が望む生活を実現するための手段のひとつです。その内容や手続きについて独力で把握するのは難しいですが、市区町村の高齢福祉課や地域包括支援センター、居宅介護支援事業者など、相談窓口は意外に身近なところにあります。

人生の終わりのその日まで、一人一人が自分らしく暮らせるように、上手に介護保険サービスを利用したいもの。

ソラストでは「あしたを元気に」をスローガンに掲げ、「自立支援」のための「トータルケア」、介護サービスをご提供しています。いつでもお気軽にご相談にいらしてください。


この記事の監修担当をご紹介します。

介護事業本部/コンプライアンス部 長村 貴美恵

ソラストへは2022年に入社。
主に、法定で定められている委員会や研修などが行なわれているか確認することや研修担当として、コンプライアンス上必要な研修などの担当をしています。
ソラスト入社前は、有料老人ホームの管理者として新設施設の立ち上げに関わり、その後10年程度は人事部で主に研修担当者として事業所研修などに携わっていました。

介護現場で働いていた時には、周りの皆さんに助けていただき、その時の繋がりで今も交流が続いています。私の周りには、いつも私のことを気にしてくれる仲間がいます。私も誰かのことを気遣える様になりたいと思いながら仕事をしています。

記事をブックマーク・シェアする

記事一覧