2022.09.29

認知症予防のためにできること。家庭ですぐに始められる5つのポイント

認知症予防のためにできること。家庭ですぐに始められる5つのポイント

最近、「うちのお父さん、ちょっとしたもの忘れが増えたかも」「お母さん、火の消し忘れが続いちゃって…」など、気になることはありませんか?
もしかすると、それは認知症が始まるサインかもしれません。

認知症は早期発見、早期対策が重要です。
少しでも「おや?」と思うことがあったら、早めに対策をとることが、ご両親の健康寿命を延ばすことにつながります。

家庭でも行える認知症の予防には、例えば、

  1. できることをムリなく続けられる工夫をする
  2. 住環境・ハード面の改善をする
  3. 生活リズムを整える
  4. 先々の目標や楽しみを用意する
  5. デイサービスなどをうまく活用する

などがあります。

この記事では、認知症予防のポイントや、認知症発症のきっかけ、認知症が進行すると本人や家族にどんな影響がでてくるのかなどを解説します。

認知症予防のためにも知っておきたい、認知症発症のきっかけとは

生活習慣の乱れをはじめ、さまざまな要素が認知症発症のきっかけに…。

そもそも、認知症はどのようなことをきっかけに始まることが多いのでしょうか。

生活リズムや食事などの「日常的な生活習慣」の乱れ

不規則な生活

夜更かしや朝寝坊などから始まる、ちょっとした生活時間のズレ。
最初は少しのズレでも、不規則な生活が長く続いてしまうと、認知症の発症リスクを高めることにもつながりかねません。
若い人でも、体内時計が乱れてしまうと「自律神経失調症」や「うつ」を発症しやすくなりますが、高齢者の場合は、それが認知症の症状としてあらわれてしまうことがあるのです。

生活時間がズレて日中の活動が少なくなると、社会や人と接する時間も減ります。 外部からの刺激がなくなることによって認知症を発症しやすくなるだけでなく、さらに進行させることにもなってしまうのです。

栄養不足や運動不足

十分な栄養がとれていなかったり運動不足が続いたりすると、筋肉が衰え、日常生活に影響がでてきます。
健康を維持することも難しくなり、そこから高齢者に多い高血圧や糖尿病を悪化させることもあります。
高血圧や糖尿病は、認知症発症の起因になるといわれる病気なので、病状が悪化することで認知症の発症リスクを高めてしまう可能性があるのです。

また、ご夫婦のいずれかが他界するなどしてお一人になると、食事をつくることがおっくうになり、栄養管理が不十分になってしまうことがあります。
あるいは食事をつくってくれていた奥様が亡くなり、食事をとらなくなってしまったという方もいます。
きちんとした食事がとれなくなることで健康が損なわれ、認知症につながってしまうのです。
一人になった寂しさや孤独感からアルコールを大量摂取し、それが原因で起こるアルコール性認知症もあります。

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長期入院や孤独感、喪失感からくる心身の不調

孤独感や喪失感

生活習慣の乱れだけでなく、孤独感や喪失感が、認知症発症の引き金となるケースもあります。
例えば、

  • 家族の独立など、人とのかかわりが減ることによって生じる「孤独感」
  • 転居などによって、地域とのかかわりが失われたために起こる「孤独感」
  • 大切な人やペットとの死別による「喪失感」

などは、年を重ねるほど起こりやすいのではないでしょうか。

誰かのお世話をしたり、ペットに話しかけたり、集まりに出かけて人と話したりすることは、日々の生活に活気を与えてくれるものです。
そうしたことが失われると、「楽しい」、「うれしい」、「がんばろう」と感じたり、ものごとに感動したり、体や頭を使うことが減ってしまいます。
変化やハリのない生活が続くことが、認知症の発症リスクを高めることにつながるのです。

長期の入院

高齢者は、日に日に筋力が衰えていくため、思わぬところで転倒してしまうことがあります。
さらに、骨粗しょう症などで骨がもろくなっており、もし骨折してしまうと手術や長期入院が必要になってしまいます。

単調な入院生活が長引くと外部からの刺激が減ります。
家事や趣味などで体や頭を使うこともなくなり、これまでできていたことがだんだんとできなくなっていきます。
長期の入院による、こうした影響は心身の不調へとつながり、さらには認知症の発生リスクまで高めてしまうのです。

▼転倒による長期入院については、こちらの記事で詳しくご説明していますので、ぜひご覧ください。
高齢者の転倒予防はなぜ大事?介護のプロが教える転倒の原因、予防の必要性や対策とは

さまざまな要素が相互に関連し合って認知症を誘発・促進

ここにあげた要素は、それぞれが相互に関連し合って、認知症を発症させたり進行させたりすることもあります。

例えば、
「大切なペットが亡くなった喪失感から気持ちがふさぎこみ、夜、眠れなくなって生活が不規則になってしまう。すると家にとじこもりがちになり、運動不足、さらには栄養不足になってしまう」といった具合です。

生活のリズムや生活習慣、心や体の調子の、どこか一つが崩れると全体のバランスが一気に崩れ、認知症発症のきっかけになることがあります。

では、認知症を発症し、さらに進行してしまうと、ご本人や周囲に、どのような影響をおよぼしてしまうのでしょうか。

認知症の進行が、ご本人や家族におよぼす影響

認知症が進むと、感情のコントロールがうまくできなくなることも

ご本人におよぼす影響

持病が悪化したり病気の発見が遅れたりする(身体面への影響)

認知症が進むと、どこか痛いところがあっても、痛みの程度や場所、体の不調を、ご本人がうまく表現できなくなることがあります。
そのために、病気の発見や進行を見逃してしまうこともあります。
例えば、「喉が渇いた」と言えなかったために、脱水症状を起こしたり、おなかの痛みをうまく伝えられなかったために、病院へ行くのが遅れたりといったこともあります。

また、料理ができなくなったり、生活リズムが乱れて食事をきちんととることができなくなったりすることで、体力・筋力が低下し活動量が減ってしまうことはよくあります。
その状況が長く続くと、「廃用症候群(はいようしょうこうぐん)」を引き起こすきっかけにもなるため、注意が必要です。

【廃用症候群とは】
生活不活発病ともいい、動かない状態が長く続くことにより心身の機能が低下し、さらに動けなくなる状態になることをいいます。

廃用症候群とは

精神的に不安定になったり感情のコントロールができなくなったりする(精神面への影響)

認知症を発症した方は、これまでできていたことができなくなったり、覚えていたことを忘れてしまったりすることに対して、自分自身でも大きな不安を感じています。
「この先どうなってしまうのだろう」という焦りや、自分自身に対するふがいなさから、気分が落ち込んだりストレスを感じたりすることも多くなってしまうようです。

また、「自分でも、もの忘れがひどいことに気づいているけれど、それをほかの人に言われたくない」といった複雑な思いをうまく表現できず、怒りっぽくなったり 感情のコントロールがうまくいかなくなったりして、マイナスな発言が多くなる方もいらっしゃいます。

家族や家庭におよぼす影響

一方、認知症が進むにつれ、介護をしているご家族の負担は大きくなってしまいます。
身の回りのお世話が増えるだけでなく、ご両親の後ろ向きな言葉やイライラに、毎日のように向き合わなくてはいけない場合もあるでしょう。

事情がわかっていても、「本当はこんな姿を見たくない」「親はいつまでも元気であってほしい」という思いの裏返しから、「なぜ、できないの?」「さっきも聞いたよ」など、つい、きつい言葉を言ったり、冷たい態度をとったりする場面もでてくるかもしれません。

終わりのみえない介護で、お互いに気持ちの余裕が持てなくなり、家族内の雰囲気が悪くなってしまうこともあります。

このような状況になってしまう前に、認知症の発症や進行の予防に取り組んでおきたいものですね。
家庭でも今すぐできる5つのポイントを、ご紹介します。

認知症の発症や進行を予防する5つのポイント

日の光を浴びて散歩に出るなど、生活リズムを整えることも、認知症の予防に効果的

認知症の予防は、なるべく早い段階から行うことが効果的です。

ポイント1 できることをムリなく続けられる工夫をする

高齢になると、だんだんとできることの範囲が狭くなっていきます。
でも、何もできなくなるわけではありません。
ご両親がこれまでやってきたことを、「どのようにすれば今後もやり続けることができるだろう?」という視点で、考えることが大切です。

【例】

  • 足腰が弱ってキッチンに立つのが難しいようであれば、椅子に座ってできる作業をお願いする
  • 洗濯物を干すことが難しいようであれば、洗濯物をハンガーにかける作業を手伝ってもらう
  • 新聞を取りに行くことができなくなったとしても、読めるのであれば新聞を手渡ししてあげる

ご本人もご家族も「できない」と決めつけてしまわず、「できる形」をみつける。
そして、ご本人に、「できる自信」を持ち続けていただくことが大切です。

ポイント2  住環境・ハード面の改善をする

長期入院のきっかけとなる「転倒」を防ぐために、家の中のバリアフリー対策をするのもおすすめです。
転倒の約半数は、家の中で起こっているというデータもあります。
手すりをつけたり、つまずきの元になるような段差を解消したりといった工夫をしておくと安心ですね。

ポイント3  生活リズムを整える

「日中は活動し、夜はしっかりと眠る」という生活リズムを守ることも大切です。
日の光を浴びて散歩したり、趣味の教室に通ったり、お友だちと会ってお話ししたりするなど、ご両親が楽しめる方法で、活動的に過ごしていただくのは、とてもよいことです。
ご家族がショッピングに誘ったり、一緒に体操しようと声をかけたりするのもおすすめです。

日中に活動すれば体は疲れ、夜は自然と眠くなるので、生活リズムも整いやすくなります。

ポイント4  先々の目標や楽しみを用意する

家族旅行やお芝居の観劇など、ご両親が楽しみにできる目標やイベントを立ててみるのはいかがでしょう。
少し先の楽しみや目的ができると、生活にハリが生まれます。

「外を歩くのはちょっと心配」などと外出をためらわれていた方も、その目標のために歩行訓練や体力づくりをがんばろうという気持ちが芽生えることもありますよ。

ポイント5  デイサービスなどをうまく活用する

もし、ご両親に支援や介護が必要になった場合は、デイサービスを利用することもできます。
デイサービスは通所介護ともいい、住み慣れたわが家での暮らしを大切にしながら、日帰りでお近くの施設に通い、入浴・排せつ・食事などの介助や、機能訓練などを受けるサービスです。

施設によっては、趣味のサークルのようなものもあります。
趣味活動の一環として、そういった施設を利用すれば、日中に楽しい時間を過ごしていただくことができます。
生活リズムが整うだけでなく、生活にハリが出たり、外に出ることで社会とのかかわりを持ったりすることにもつながりますね。

では、「介護のプロ」は、認知症の方のケアをするにあたって、どのようなことを大切にしているのでしょうか。

家庭での認知症予防の参考にしたい、ソラストの認知症ケア 

安心できる場所で、自分らしく暮らしていただくために

認知症になられた方の生活の場の一つに、グループホームがあります。
グループホームとは、認知症と診断された高齢者が、日常生活のサポートを受けながら、介護士とともに少人数で共同生活を送る場です。

ソラストのグループホームでは、ご利用者様に、自分らしい時間をゆっくりと過ごしていただくために心がけていることが2つあります。
ご家庭で、「ご家族の認知症予防に取り組むときに、どのように接したらよいか」の参考にしてください。

「自分で、できる」と感じていただくこと

グループホームは、ご利用者様にとっては「生活の場」です。
少しずつ、いろいろなことができなくなっていく中でも、これまでやってきたさまざまなこと、例えば料理や洗濯といったことを、できる限り続けていただくことが大切だと考えています。

年を重ねる中で、「やれないことが増える」というのは、寂しいものです。
自分でできることは自分でしながら、ご本人が望む生活をご自分のペースでゆったりと送っていただくことが大切。
スタッフは黒子、あくまでも主役はご利用者様です。

お一人おひとりが、まだまだいろんなことを「自分で、できる」と感じ、自分らしくイキイキと生活していただくことを、日々の目標としています。

「大切にされている」と感じていただくこと

毎日を安心して過ごしていただくために、私たち職員のかかわり方はとても大切だと考えています。
TPOに合わせた服装や言葉づかいは、ご利用者様に対する最低限の礼節です。

親しみを表そうとするあまり、友だちに話すような口調で話しかけたり、軽装で仕事をしたりしては、「大切にされている」と感じてはいただけないでしょう。

縁あって生活の場を共にするご利用者様に、「ここは安心して暮らせる場所だ」と思っていただくこと
また、ご家族様にも「ここなら、安心してまかせられる」と信頼していただくこと。
そのために、誰から見ても礼儀正しく、気持ちのよいコミュニケーションをとることを、スタッフ全員が心がけています。

心から安心できる場所で、ご本人らしさを大切にしながら、ご本人が望む生活をしていただくことが、認知症の進行を予防することにもつながると考えています。

最後に

認知症は、いつから始まって、どれくらい進行しているのかが、わかりにくいものです。
気がかりなことがあっても、「まさかうちの親に限って…」という気持ちから、気づかぬ振りをしてしまう方も多いのが実情です。

しかし、認知症の予防対策や、進行を遅らせる方法はあります。
そして、その対策は早めに行うことがよいとされています。
今回ご紹介したことを参考に、ご両親のためにできることを、ひとつずつ行ってみてくださいね。

「病院に行くまでもなさそうだけれど、ちょっと気になる」というときは、地域包括支援センターなどにご相談ください。
認知症について相談できる場としては、ほかにも「認知症カフェ」や「認知症サポート講座」などもあります。

ご家族の皆様が心身ともに元気であって初めて、ご両親の健康、心、生活を支えることができます。
決して、「家族だけで何とかしよう!」とがんばりすぎないでくださいね。
困ったときは早めにプロの力を借り、ご両親にも、ご家族にとっても最良の方法をみつけてください。


この記事の監修担当をご紹介します。

天野 雅章

天野 雅章
東京介護ブロック ディレクター 天野 雅章

2013年にソラストへ入社。入社前から介護の仕事に従事しており、現在はソラストのディレクターとして、東京都内の中央エリアを担当しています。
ディレクターの仕事は、担当地区すべての事業所の管理と統括。各事業所がコンプライアンスに基づいた運営をしているかの確認なども行っています。また、働く仲間の意見を聞いたり相談を受けたり、メンバーの成長を支援するための教育も行っています。
認知症の方のケアで大切にしているのは、「その人らしさを出してもらうこと」。安心して、ゆったりとご自分らしく生活していただける場をご提供したいと考えています。

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