2023.05.16

認知症でも入れる4つの施設。施設の探し方や施設を選ぶときに重視したいポイントとは

認知症でも入れる4つの施設。施設の探し方や施設を選ぶときに重視したいポイントとは

ご自宅での介護に限界を感じ、施設を検討するという方は多くいらっしゃいます。
ただ、ご両親に認知症がみられる場合、「本当に暮らしやすい施設が見つかるのだろうか」と心配になる方も多いでしょう。

認知症の方が入れる施設としては、主に次の4つがあります。

  • 特別養護老人ホーム(特養)
  • 介護付有料老人ホーム
  • グループホーム
  • サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)

本記事では、これら4つの施設の特徴や違いをお話しすると同時に、認知症の方のための施設選びで重視したい2つのポイントをご紹介します。

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認知症の方が入れる施設の探し方

認知症の家族が入れる施設をインターネットで調べている様子

認知症の方が入れる施設を探すには、次のような方法があります。

インターネットで情報収集をする

認知症の方のための施設の情報は、インターネット上に数多くあります。

何から始めればよいかわからないという場合は、手軽にできる情報収集から始めてみましょう。「認知症 老人ホーム」と検索すれば、老人ホームへの入居に関する情報を集めることができます。

また、「認知症 老人ホーム 地域名」などで検索すると、お住まいの地域や希望する地域の老人ホームの情報を知ることもできます。

介護の先輩に話を聞く

一般的な情報は、インターネットで簡単に探すことができますが、有意義な情報ばかりとは限りません。

具体的に参考になるのは、実際に介護を経験し、家族が施設で暮らしているという方の経験談です。身近にそういった経験をお持ちの方がいたら、ぜひお話を聞いてみてください。

同じ悩みを抱えている方の視点で、施設の探し方についても、リアルで役立つアドバイスをしてくださるのではないでしょうか。

地域包括支援センターに相談する

インターネットで一般的な情報を知ったり、介護の先輩からリアルな情報を教えてもらったりするだけでなく、介護現場をよく知るプロの話を聞くことも大切です。

すでに担当のケアマネジャーやヘルパーがいる場合は、直接相談してみてください。
もし、まだ担当の方がいない、誰に聞いてよいかわからない場合は、お住まいの「地域包括支援センター」に連絡してみましょう。

地域包括支援センターは、必ず各市町村に設置されています。
社会福祉士や保健師など専門的な知識を持った人が、介護や医療について多面的な支援を行ってくれるので、安心して相談できます。

認知症の方も入れる4つの施設と特徴

認知症の方が入れる4つの施設の特徴をまとめた表

では、実際に認知症の方が入れる主な4つの施設をご紹介します。

  • 特別養護老人ホーム(特養)
  • 介護付有料老人ホーム
  • グループホーム
  • サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)

特別養護老人ホーム(特養)

公的機関が運営する、高齢者のための施設です。
通称「特養(とくよう)」と呼ばれています。

介護度の高い人が優先して入居できるという特徴があります。

ただし、公的機関のため事務手続きが多く、入居までに時間を要することもあります。
また、費用が抑えられる特養は希望する方も多く、地域や施設によっては待機期間が数年という場合もあります。

対象者 原則として要介護3以上、65歳以上の方
スタッフ 介護スタッフが24時間常駐
主な提供サービス 生活援助・身体介護
看取りケア 可能

介護付有料老人ホーム

民間事業者が運営する、高齢者のための施設です。入居対象者、介護スタッフの24時間常駐や、看取りケアを行っている点では特養と同じです。

しかし、医療スタッフが24時間常駐していたり、機能訓練やレクリエーションが充実していたりするなど、特養にはない特徴が多くあります。

対象者 基本的に要介護認定を受けた65歳以上の方
スタッフ 介護スタッフが24時間常駐
看護師などの医療従事者も24時間常駐していることが多い
主な提供サービス 生活援助・身体介護・機能訓練
看取りケア 可能

介護付有料老人ホームを探す »

グループホーム

民間事業者が運営する、認知症の方が少人数のグループで過ごす施設です。
機能訓練を受けながら生活の質を維持できるよう、認知症の専門的な知識を持った介護スタッフが支援します。

地域密着型サービスのため、住んでいる市区町村以外の施設への入居はできません。

対象者 医師から認知症の診断を受け、集団生活を営むのに支障のない方(居住地域限定)
スタッフ 認知症の専門的な知識を持った介護スタッフが24時間常駐
主な提供サービス 生活援助・身体介護・機能訓練・認知症ケア
看取りケア 受け入れ可
(ただし医療依存度が高くなると入居の継続が難しくなる)

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サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)

民間事業者が運営する、バリアフリー対応の賃貸住宅です。

老人ホームやグループホームのような介護サービスはなく、希望者は外部サービスを利用します。スタッフが24時間常駐することもありません。

認知症の方の対応には施設によって違いがあるため、入居前の確認が必要です。

対象者 基本的には自立可能な高齢者
施設によっては要介護認定を受けた人でも受け入れている
スタッフ 日中のみ介護士や看護師が常駐
主な提供サービス 安否確認・生活相談
看取りケア 不可
(介護が必要になったり、介護度が進んだりした場合退去要請の可能性あり)

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認知症の方が入れる施設を探すときに重視したい2つのポイント

認知症の方と施設の医療スタッフが談笑する様子

認知症の方が入れる施設は主に4つありますが、ご両親が最期まで暮らせる施設をと考えている場合は、看取りケアがある老人ホームがよいでしょう。

特別養護老人ホームと介護付有料老人ホーム、それぞれの違いはわかったものの、「料金で考える?」「介護サービスで考える?」など、選択に悩まれる方も多いと思います。

そこで「認知症の方が安心して過ごせるかどうか」を基準としたときに重視したい、2つのポイントをお話しします。

24時間の見守りは、介護・医療のW体制となっているか

ご両親に万が一のことがあった場合、24時間の見守り体制が整っているかどうかは重要なポイントです。特に認知症の方の場合、ご本人が病状をうまく伝えられないこともあるため、医療スタッフがいると安心です。

特別養護老人ホームでは、「介護スタッフが24時間常駐」しているのに対し、介護付有料老人ホームは「介護スタッフに加え、医療スタッフも24時間常駐」している場合が多くなっています。

24時間の見守り体制の具体的な内容についても確認いただくと安心です。

スタッフの人員配置は、3対1以上かどうか

もう一点ご確認いただきたいのが、スタッフの人員配置です。一般的に、介護施設には国が定めた人員配置基準があり、「入居者3人に対して1人以上」と決まっています。

特別養護老人ホームはこの基準に沿った人員配置が行われているのに対し、介護付有料老人ホームの多くは、「入居者2人または1人に対して1人」など基準よりも多い人数を配置しています。

そのためスタッフにも余裕が生まれ、お一人おひとりへの対応時間を長く取ることができるのです。

認知症の方は不安や戸惑いを抱えながら生活されているため、会話やふれあいの時間が持てるような人員体制かどうかを確認いただくことが大切です。

最後に

「自宅での介護よりも良いと思える施設はあるのだろうか」
「認知症の親が、本当に安心して暮らせる場所はどこなのだろう」

認知症のご両親の介護が難しくなり、施設を探すことになった場合、ご家族にはさまざまな葛藤があるでしょう。

しかし、24時間の見守り体制が充実しており、スタッフの人数が多い有料老人ホームのような施設であれば、ご両親も安心してお過ごしいただけます。また、介護のプロに任せることで、ご家族の心身の負担が大きく軽減できることもメリットの一つです。

実際、ご家庭での介護の限界を迎え、疲れ切ったご様子だったのが、老人ホームをご利用することで双方に適度な距離ができ、心に余裕が生まれたというケースもあります。
離れたからこそお互いが和やかに会話できるようになり、「家族の絆」が保たれることもあるようです。

ご両親が最期まで、自分らしく心地良く過ごしていただける施設を検討する際には、ぜひ「介護付有料老人ホーム」を加えていただければと思います。


この記事の監修担当をご紹介します。

東京介護ブロック/スーパーバイザー 野村 峯子

2000年から、介護老人保健施設などで介護職員として働き始めました。
2004年頃から、認知症ケア・医療連携による訪問看護サービスなどを強みとするソラストのグループ会社で勤務し、その後、ソラストへ入社。現在は、介護スタッフの研修プログラムの企画、講師を担当。各事業所に出向き、運営状況やスタッフへのアドバイスなどを行っています。

認知症の方のケアで大切にしているのは、ご本人と目線を合わせ笑顔で応対することです。
不安や戸惑いを抱えたご入居者様に、「ここは安心して暮らせるところだ」と感じていただけるよう努めております。

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