グループホーム(認知症対応型共同生活介護)の特徴を解説【費用・ケア・生活環境など】

グループホーム(認知症対応型共同生活介護)の特徴を解説【費用・ケア・生活環境など】

団塊ジュニア世代が65歳を迎える2040年、認知症患者数は約584万人に達すると推計されています。この数字は高齢者のおよそ15%、つまり6.7人に1人が該当する計算です。さらに、軽度認知障害(MCI)も約613万人に上るともいわれており、認知症対策はこれからの社会で避けて通れない課題となっています。

こうした社会背景の中、これまで以上に重要な施設となっているのが「グループホーム(認知症対応型共同生活介護:以下、認知症グループホーム)」です。そこで今回は「認知症グループホームって何だろう?」と不安や疑問を抱える方に向けて、その特徴を詳しく解説します。

今すぐに情報収集が必要な方はもちろん、自分やご家族が認知症になった場合に備えたい方も、認知症グループホームの知識を深め、適切な選択ができるようにしておきましょう。

認知症グループホームとは?

認知症グループホームは、認知症と診断された(急性を除く)高齢者が、住み慣れた地域で生活することを目的とした地域密着型サービスのひとつです。認知症を抱える方々が、ご家族などと自宅で暮らすような家庭的な雰囲気の中で、共同生活をする場所です。

なお、グループホームと呼ばれる施設には次の2種類がありますが、この記事では認知症グループホームについてご紹介しています。

  • 認知症グループホーム:認知症の高齢者を対象としたグループホームのこと
  • 障害者グループホーム:障害者を対象としたグループホームのこと

どんな施設?

グループホームの特徴は、入居者がユニット(共同生活住居単位)で生活することです。1事業所あたり原則2ユニットまで、1ユニットあたりの定員が5人以上9人以下と定められています。ユニットでは、アットホームな雰囲気の中、一人一人の能力に応じて日常生活を送れるよう介護スタッフが支援。また、必要に応じて入浴、排泄、食事などの介護サービスも提供しています。

ソラストのグループホームでは、9人・2ユニットを基本とし、「認知症ケア指導員」を配置することで専門性の向上に努めています。なお、認知症ケア指導員とは、ソラスト社内独自の指導者育成機関(認知症ケア指導員養成研修)を修了したスタッフです。

入居条件

グループホームの入居対象者は、65歳以上で、要支援2から要介護5、医師から認知症であると診断されている方となります(要診断書)。また、グループホームは、介護付有料老人ホームや特別養護老人ホームとは異なり、住み慣れた地域で生活することを目的とした地域密着型サービスであるため、施設のある地域にお住まいの方(住民登録があること)が条件になります。

例えば、ソラストが運営する「グループホームソラスト土気」(千葉市)に入居をご希望の場合は、原則として千葉市にお住まいの方(住民登録があること)が対象となります。

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認知症グループホームへの入居にかかる費用

多くのグループホームでは、入居時と入居後にそれぞれ費用が発生します。入居にかかる主な費用について見ていきましょう。

前払金

グループホームの居室は入居者にとって「家」となるため、入居費や家賃という表現が一般的に使われています。それに伴い入居時に前払金(入居金)が発生します。

前払金は、家を借りる際の「敷金」に相当するもので、家賃の1~3カ月分を事業者が預かります。入居中の居室修繕費、家賃滞納時の補てん、退去時の居室の原状回復費(清掃費や修繕費など)の精算などに用いられ、残金が発生した場合は返金されます。中には前払金がかからない施設もあるため、事前に入居を希望する施設にご確認ください。

ソラストが運営する「グループホームソラスト土気」(千葉市)の場合、前払金として2カ月分を申し受けています。

月額利用料

グループホームに支払う月額費用は家賃のほかに、管理費や食費、水道光熱費が加わります。さらに、医療費、理美容費や新聞購読料など個人の嗜好品費が発生し、これらの月額費用は全額自己負担となります。

医療費は、一般的に健康状態によって通院頻度などが異なるため、月にかかる金額は一人一人で異なります。また、自治体によっては低所得者や生活困窮者に対して家賃助成を適用するケースもあります。

介護保険自己負担額・上乗せのサービス加算

グループホームで提供される介護サービスには介護保険が適用されます。介護サービスの一部は利用者の自己負担となり、金額は要支援、要介護の段階や施設のユニット数によって異なります。また、より充実した介護サービスを提供するための費用が加算されることがあります。

地域によって異なる家賃に注意

一般向け賃貸物件の家賃はその地域の土地価格(地価)に影響されますが、グループホームの家賃も同様で地域によって異なります。例えば、同じ関東地方でも東京23区と茨城県の家賃を比べると、土地価格の高い東京23区のほうが家賃は高くなる傾向です。

このようにグループホームの月額費用は地域によって変わるため、入居希望施設の所在地の相場を確認する必要があります。

認知症グループホーム入居までの流れをステップ別に解説

ご家族や親しい人が認知症になってしまったとき、居住先の選択肢のひとつがグループホームです。では、入居を希望する際、まず「どこ」へ行って「何」を相談すればいいのでしょうか。

ここからは、グループホーム入居までの一般的な流れを説明します。

(1)入居希望のグループホームへ問い合わせ

医師が認知症と診断していないとグループホームへは入居できません。また、グループホームは地域密着型のサービスという位置付けのため、施設所在地と同じ地域に住民票がないと入居できません。

ソラストの場合、希望する地域のグループホームに空きが出るまでの間、隣接した有料老人ホームショートステイ小規模多機能型居宅介護などを利用していただくことが可能です。例えば、ショートステイは1泊2日から利用可能ですが、中にはグループホームの空きが出るまで利用される方もいらっしゃいます。

(2)入居希望施設の見学

グループホームは家庭的な雰囲気の中で、自宅で暮らすように生活する「家」です。入居者との相性もあるため、入居前にはいくつかのポイントを確認しておくことが大切です。

【主なチェックポイント】

  • 施設の雰囲気やスタッフの対応
  • 居室や共有スペースの清潔さ
  • 食事の内容(可能であれば試食するのもおすすめ)
  • 医療・介護体制(特に身体的な介護が必要な場合)

施設によっては体験入居が可能な場合もあります。ソラストでは、1週間程度の体験入居を利用いただけますのでまずはご相談ください。体験入居後は入居に至る方がほとんどです。

(3)入居申し込み・面談

入居申込書など必要な書類を提出すると「仮申し込み」となります。グループホームの担当者と入居者、ご家族が面談して、入居者の心身の状況などの確認を行います。

(4)契約

契約内容や管理規定などに同意後、契約の手続きに進みます。契約にあたって関係書類として、入居者・保証人の身分証明書、入居者の健康診断書、認知症診断書、緊急連絡先、保証人情報などが必要です。確認不足によって後々トラブルにならないように、利用規約、入居に関する重要事項説明書の内容をしっかり確認してから、契約を締結することが重要です。

(5)入居

入居が正式に決まったら、入居時に必要な持ち物を用意して持ち込みます。持ち物は一般的に、衣類や寝具、靴、タオル、食器、その他の日用品です。入居時の持ち物や持ち込み禁止の持ち物は施設によって異なるため、事前に入居予定の施設へ確認して準備しておきましょう。

認知症グループホームでの日常生活のイメージ

グループホームでの日常生活はなかなかイメージしづらいものです。ご家族の新しい「家」となるグループホームの1日の生活の流れを具体的に説明します。

1日のスケジュール

グループホームは各居室が入居者にとっての「家」となるため、画一的なスケジュールでは対応しないケースがほとんどです。一人一人の生活リズムに合わせたスケジュールを調整しますが、大まかな1日の過ごし方は次の通りです。

<1日のスケジュール例>

  • 起床
  • 朝食
  • 服薬、排泄、入浴
  • 趣味の時間、アクティビティ、散歩
昼~夕方
  • 昼食
  • 趣味の時間、アクティビティ
  • おやつ
  • 夕食準備
  • 夕食
  • 自由時間
  • 就寝

ソラストでは食事の際、例えば野菜の皮をむいたり味見をしたりするサポートを通じて、スタッフや入居者同士の会話を楽しんでいただくようにしています。

受けられる介護サービス

グループホームは介護保険法に基づき運営されていて、法律上の正式名称は「認知症対応型共同生活介護」と呼ばれています。また、同法が規定する「地域密着型サービス」を事業として行っています。つまり、グループホームは要介護認定を受けた方が、介護保険を利用して入居できる公的な介護施設ということになります。

グループホームで受けられる介護サービス(介護保険サービス)には、次の2種類があります。

  • 基本サービス…要介護度に応じた介護
  • サービス加算…介護体制や設備の充実など、追加の介護

なお、介護サービスの自己負担額は原則1割ですが、一定以上の所得によって2割または3割になります。

介護、看護体制など人員体制

グループホームでは、介護職員について人員配置基準が次のように定められています。

  • 日中…利用者3人につき1人以上
  • 夜間…ユニットごとに1人以上

このほか、ユニットごとに管理者1人(3年以上の認知症介護従事経験があり、厚生労働大臣が定める研修を修了した者)、計画作成担当者1人以上(最低1人は介護支援専門員)という人員配置基準もあります。

また、看護体制については、協力医療機関と連携して必要に応じて行われます。ソラストの場合、医療ケアの提供は、ドクターや看護師に相談、または訪問してもらえる体制を整えています。

認知症グループホームに向いている人、向かない人

入居される方が、もともと人とのコミュニケーションを取るのが苦手だったり、認知症が原因で興奮すると暴力を振るってしまったりという行動があると、ご家族は「ほかの入居者とうまくやっていけるだろうか?」と心配になるのは自然なことです。

ここでは、グループホームでの生活に向いている人、向いていない人について考えてみましょう。

向いている人、向いていない人

一概には言えませんが、性格的にコミュニケーションを取るのが得意だったり、人と過ごすのが好きだったりする方は、入居後も楽しそうに過ごされている傾向があり、グループホームへの入居も向いていると言えるでしょう。

反対に、内向的な性格だったり、人に世話を受けることを嫌がったりする方は、向いていないかもしれません。ただソラストでは、プロの介護職員としてスタッフ一人一人が「どうしたら、そうした方でも安心して過ごしていただけるか?」を一緒に考えながら生活のサポートをしています。

ホーム内でトラブルがあったときは?

基本的にトラブルがあったからといってすぐに退去につながることはありません。興奮状態になったり、暴力を振るったりする行為には、必ず何かしらの理由があるはずです。ソラストでは、その理由を探り、さまざまな角度から対処法を検討して、入居者が安心して過ごしていただける介護サポートに努めています。

利用者(認知症高齢者)が入居してからのご家族の役割とは?

認知症が進んだとはいえ、入居者ご本人と離れて暮らすのは、ご家族にとっては心配なものです。認知症が進むと、ご本人は体調が悪くなっても「こうしてほしい」などの意思表示をすることが次第に難しくなってきます。

例えば、口から食事が摂れなくなったときに、「胃ろう」にして長く生きたいのか、できる限り好きなものを食べたいのかなど、ご本人に確認することはできません。また、興奮状態になったときに、いろいろな介護を試してみたけれどうまくいかず、薬を調整することも出てきます。

こうした健康状態の変化への対応はもちろん、入居者ご本人の日々の生活の質を維持することは、グループホーム入居後も大切なポイントです。そのため、グループホームのスタッフをはじめ、地域社会、ご家族が連携したサポートが注目されています。

例えば、入居者とご家族との定期的な面会や、運営推進会議(入居者ご本人、ご家族、区市町村職員、地域住民の代表者に対して、介護事業所がサービス提供内容や地域連携の取り組みなどを報告し、参加者から評価や助言を受ける会議)を定期的に開催しています。

入居に至るまで精一杯の介護に取り組まれたご家族が孤立し続けるのではなく、関係者との交流を深めることで信頼関係を築き、「ご本人が望む暮らしをどう実現させるのか?」について関係者が一緒に考える取り組みが多くのグループホームで行われています。

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認知症対応のソラストのグループホームの特徴

ここからは、利用者ご本人とご家族にも安心してグループホームをご利用いただくために、ソラストのグループホーム運営の特徴を3つピックアップしてご紹介します。

各グループホームに「認知症ケア指導員」を配置

認知症の方をお預かりするため、ソラストでは、社内で独自の指導者育成機関(認知症ケア指導員養成研修)を設置し、各グループホームに「認知症ケア指導員」を配置しています。認知症介護のエキスパートを育成することで、施設全体の質の向上を図り、入居者一人一人の気持ちに寄り添ったケアを心がけています。

地域ごとに特色ある生活環境やトータル介護サービスのご提供

ソラストのグループホームは、地域ごとに特色があります。もしも複数の施設で迷う際は、施設見学をして、入居者ご本人やご家族に合った施設を選ぶのがおすすめです。足を踏み入れたときの雰囲気、職員の印象など、時にはインスピレーションも大切かもしれません。

また、ソラストでは、ショートステイや小規模多機能型居宅介護なども運営しています。グループホーム単体ではなく、同じ敷地内や近隣にある事業所と連携したトータルケアをご提供する柔軟な対応で、質の高い介護サービスを継続してご提供可能です。

ICTを活用したサービス向上の推進

紙ベースの業務やりとりが多い介護業界ですが、ソラストでは、ICT(情報通信技術)を積極的に導入して業務のデジタル化を推進・模索しています。ICT導入により、例えば、介護記録の最適な管理運用、体温や寝返りなどのライフログ感知した見守りシステム、病院や各事業所に散らばっているデータの利活用などが可能になります。

こうした業務のデジタル化は職員の事務作業の負担軽減にもなり、その結果、従来のアナログ業務にかかっていた手間が削減され、介護サービスの向上につながります。

ソラストの代表的な認知症グループホーム

ここでは、ソラストの代表的なグループホームをご紹介します。施設のある地域に住民票がある方は入居候補の参考に、それ以外の方もグループホームでの生活をイメージする参考にお役立てください。

グループホームソラスト台東

東京都台東区にあるグループホームソラスト台東は、在宅サービスから施設サービスまで対応している複合施設です。

【特徴】

  • 訪問、通所、居宅、小規模多機能型居宅介護などの在宅系サービスを併設しています。
  • 屋上に箱庭があります(イチゴやしそなどが実ります)。
  • 認知症というご病気をお持ちの入居者様の不安や怒り、そのすべてに寄り添い安心を提供していきます。
  • 自分の親を預けたくなるようなグループホームを目指しています。
  • ご家族にとって大切な方をお預かりしているという気持ちでお手伝いをさせていただいています。

■施設詳細は以下のページをご覧ください。
グループホームソラスト台東

グループホームソラスト土気

千葉県緑区にあるグループホームソラスト土気は、有資格者のスタッフを多く配置して丁寧なケアを行っている施設です。

【特徴】

  • ソラストのグループホームの中では老舗的存在で、地域社会との交流も長く続いています。
  • 専門性の高いケアの提供、看取り実績も豊富で、最期の時まで安心して過ごしていただける環境を整備しています。
  • ただ日常を過ごすだけでなく、入居者様が楽しく過ごすためのアクティビティやイベントに力を入れています。

■施設詳細は以下のページをご覧ください。
グループホームソラスト土気

グループホームソラストももか太子

兵庫県揖保郡太子町にあるグループホームソラストももか太子は、入居者様らしい生き方や生活ペースの尊重を心がけている施設です。

【特徴】

  • 会話、生活のペース、行動など、入居者様の「流れ」を止めない暮らしの工夫をしています。
  • 終末期においても、最期まで住み慣れた環境の中で、自分らしく穏やかに過ごせるよう看取りケアを行なっています。
  • 「自宅で過ごすより、ももかに入居したい」。認知症になり日常的に介護が必要になったとき、真っ先にそう言っていただけるような施設を目指しています。
  • 認知症への正しい理解が不可欠であると考え、地域住民向けに認知症の啓発活動を行ったり、地域の福祉活動へ参加したり、「ももか便り」を近隣の方へお届けしたりしています。

■施設詳細は以下のページをご覧ください。
グループホームソラストももか太子

まずは認知症グループホームを知ることから始めましょう!

グループホームは入居者様にとって、家庭的な雰囲気の中で安心して過ごせる新しい「家」となる場所です。施設選びでは、費用やサービス内容、雰囲気などをじっくり確認することが大切です。見学や相談を通じて、入居後の生活をより具体的にイメージできますので、まずはお気軽にお問い合わせください。


この記事の監修担当をご紹介します。

関東介護ブロック/エリアマネージャー 古田 浩二

新卒でソラストに入社し、現在は千葉エリアのエリアマネージャーを務めています。各事業所を訪問し、職員が安心して働ける環境づくりに努めるとともに、予算達成など適切な運営のサポートを行っています。
双方向のコミュニケーションを重視し、常に相手の話や意見に耳を傾けるよう心がけています。職員が安心して働ける環境を整え、同時に利用者様が安心して過ごせるサービス提供を実現しています。日々の業務を通じて、職員と利用者様の両方が満足できる環境づくりに取り組んでいます。

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