認知症がある親との接し方は、多くの子世代が抱える悩みです。「やさしくしたいのに、つい怒ってしまう…」「どう対応すればいいかわからない…」と、自分を責めてしまう人も多くいます。
ただ、親への接し方を考えるとともに、介護するご家族自身の心の余裕を整えることが大切です。その上で、親と目線を合わせて寄り添う姿勢を大切にしましょう。
今回は、介護する側の心の余裕の作り方と認知症がある親との向き合い方、会話のコツ、公的な相談先などについて、わかりやすく解説します。
認知症がある親との接し方の前に|家族の心の余裕を整える
認知症がある親にやさしく接するためには、まずご家族自身の心の余裕が大切です。無理に頑張ろうとせず、自分を整えるところから始めましょう。
ここでは、そのための考え方と環境づくりについてご紹介します。
「認知症=暗い」のイメージから一歩離れる
認知症と聞くと、「大変」「つらい」といったネガティブな印象が浮かびがちです。気持ちを前向きにするために、認知症に関する本や認知症当事者の講演など、前向きな情報に触れる機会を作ってみてください。さまざまな情報に触れることで、介護の際の心に余裕が生まれるきっかけになります。
認知症によって「できなくなったこと」ではなく、「まだできていること」や「一緒に楽しめること」に目を向けることで、親との関係にあたたかさが戻り、ご家族の心にも余裕が生まれてきます。
肯定的な視点が、親との接し方を無理なく続ける土台になってくれるでしょう。
家族が笑顔でいられる環境が、親との関係を支える
介護は「我慢」や「気力」だけで続けられるものではないのは、すでにお気づきかもしれません。親にやさしく接したいと思っていても、自分が疲れて余裕をなくしていると、言葉や表情がきつくなる場合もあります。
だからこそ、自分を大切にしながら親と接する姿勢が大切です。気持ちを聞いてくれる人や場を持ち、デイサービスやショートステイを活用して、介護をするご家族の休息時間を確保するのも一つの方法です。
プロの力を借りることに、「申し訳ない」と感じる必要はありません。これは、介護をする人が休む時間を作るための大切な公的システムです。介護サービスを利用する時間は、プロに任せて休息をとりましょう。
相談できる場を見つけて“孤立”を防ぐ
認知症がある親との関わりは、ご家族だけで抱え込むと、気持ちや体力が追いつかなくなる場合があります。そんなときは、公的な相談場所の利用がおすすめです。
詳細は後述しますが、「認知症の人と家族の会」や「地域包括支援センター」、「認知症カフェ」など、同じ立場の人と出会える場所が頼りになります。
同じ経験をしている人の話は、専門的なアドバイス以上に心に寄り添ってくれる場合があります。理解者がいると感じるだけで、気持ちがふっと軽くなり心の安定につながります。介護の悩みもストレスも、一人で抱え込まず、安心して話せる相手を見つけていきましょう。
認知症がある親との接し方で大切なのは「完璧を目指さない」こと
認知症がある親に、いつもやさしく接しようと頑張り過ぎると、かえってつらくなってしまいます。腹が立つ日もあれば、穏やかに笑い合える日もあります。「完璧でなくていい」という前提を持つのが、ご家族自身の心を守る第一歩です。
ここでは、気持ちが少し楽になる、認知症がある親との向き合い方のヒントをご紹介します。
【親との向き合い方】親につい怒ってしまう自分を責め過ぎない
認知症がある親との接し方に「こうすべき」という正解はありません。言葉や感情がぶつかり、つい怒ってしまうことも、介護の大変さを物語る一面です。
「どうすればいいのかわからない」「イライラしてしまう」――介護する側のそんな気持ちは、心の疲れや不安のサインかもしれません。大切なのは、怒りやいらだちを感じた自分を責め過ぎず、まずは気持ちに気づいてあげること。
自分自身の感情に向き合い、心を整えるためにも、まずは一息つきましょう。そして、一人で抱え込まずに周囲のサポートを頼る姿勢が大切です。
【親との付き合い方】言い過ぎたときは「ごめんね」が大切
認知症があっても、言葉に込められた感情や思いは、ご本人にしっかりと伝わっています。もし、つい感情的になってしまったとしても、「さっきは言い過ぎたね、ごめんね」と、素直に謝ることが大切です。
完璧に対応し続ける必要はありません。怒ったり謝ったりしながら、日々のやりとりを通して、親子の信頼関係は少しずつ深まっていきます。認知症がある親との付き合い方は、完璧さよりも誠実さが何よりのカギになります。
心に留めておきたいこと
言葉や態度は、想像以上に相手の心に影響を与えます。認知症がある親との関係を大切にするために、次の3つのポイントは意識しておきましょう。
- 自尊心を傷つけるような「頭ごなしの叱責」は不安や混乱を強めます。「なんでできないの!」といった言葉は要注意です。
- 子ども扱いや命令口調は避け、親の「人としての尊厳を保つ」声かけを意識しましょう。
- 無視や放置は不安を増幅させ、混乱につながる場合があります。
相手を「尊重する気持ち」をベースに、できる範囲で寄り添いながら接していくことが大切です。
親との“水平な関係”を意識する
認知症がある親との関係は、できるだけ水平な関係を意識しましょう。「子どもだから頑張らなきゃ」と抱え込み過ぎる必要も、「世話をしている自分が上」というかたちになる必要もありません。
親の気持ちと自分の気持ちの両方を大切にしながら、手をつないで横に並んで一緒に歩いていくような関係を築くことがポイントです。時には隣にいる親や近しい人たちに「今は少しつらいんだ」と本音を伝えることが、健やかな付き合い方につながります。
認知症がある親の介護で困ったときに頼れる相談先
認知症の介護は、ご家族だけで「なんとかしよう」とする必要はありません。ケアマネジャーのほかにも頼れる場所はたくさんあります。相談先を複数持つことで、気持ちに余裕が生まれるでしょう。
ここでは、ご家族が頼れる主な相談窓口をご紹介します。
地域包括支援センター
地域包括支援センターは、高齢者の生活や健康、介護に関する総合相談窓口です。各市町村が設置主体で、運営は市町村から委託を受けた社会福祉法人や医療法人などが行っています。
認知症に関する悩みや、今後の生活についての不安も気軽に相談できます。ご家族だけで抱え込まず、まずは相談するのがおすすめです。
【主なサポート内容】
- 認知症や介護の困りごとの相談ができる
- ケアマネジャーの紹介や、必要な介護サービスの調整をサポートしてくれる
- 介護保険や地域の支援制度などの情報提供を受けられる
お住まいの地域の地域包括支援センターをお探しの際は、各自治体へ問い合わせるか、厚生労働省が運営する以下のサイトを利用すると便利です。都道府県を選択して各自治体のセンターを検索できます。
■厚生労働省が運営するサイト
介護事業所・生活関連情報検索「介護サービス情報公表システム」
認知症疾患医療センター
認知症疾患医療センターは、認知症の治療や相談に応じてくれる専門の医療機関です。厚生労働省の基準に基づき、各都道府県・政令指定都市の総合病院などに設置されています。
もの忘れや行動の変化が気になったときに、専門医による診察を受けられます。相談も受け付けており、医学的な支援を受けられる心強い場所です。
【主なサポート内容】
- ご本人やご家族が専門医に相談できる
- 診断と初期対応・合併症・周辺症状への急性期の対応
- 地域ごとに設置されており、医療機関などの紹介もしてくれる
■参考サイト
主な認知症施策について|厚生労働省
電話・オンライン相談窓口
各都道府県や社会福祉協議会が設置している電話やオンラインの相談窓口は、介護でつらいときに気軽に頼れる存在です。通話料はかかりますが無料で相談できる『高齢者総合相談センター(シルバー110番)』『高齢者安心電話』などがあります。
【主なサポート内容】
- 介護の悩みや不安を相談できる
- 介護保険や生活の相談にも乗ってもらえる(シルバー110番)
- 高齢者福祉制度、ご家族の介護、生きがいなどさまざまな相談ができる(高齢者安心電話)
電話番号を調べたいときは、インターネットで「自治体名 シルバー110番」と検索すると、お住まいの地域の情報を探せます。
■参考サイト
東京都高齢者総合相談センター(シルバー110番)
高齢者安心電話:公益社団法人 東京社会福祉士会
認知症カフェ・認知症の人と家族の会
「認知症カフェ」や「認知症の人と家族の会」は、認知症があるご本人とご家族、専門職、地域の人が集まれる場です。同じ悩みを持つ人と話せると、孤独から解放され、心の負担がやわらぎます。
【主なサポート内容】
- 経験を共有でき、孤立感が軽減される
- 専門職や同じ経験をしている人に気軽に相談できる
- 地域とのつながりができ、支え合う関係が生まれる
■参考サイト
家族支援と認知症カフェ(認知症介護情報ネットワーク)
公益社団法人認知症の人と家族の会 | 認知症になっても安心して暮らせる社会へ
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認知症がある親が施設を嫌がる理由は?家族ができる対処法
認知症がある親と、よりよいコミュニケーションをとる接し方のコツ
認知症がある親との会話は、少しの工夫で穏やかに進められます。言葉の選び方や声のかけ方を見直して、お互いに安心できる関係を築いていきましょう。
ここでは、コミュニケーションの具体的なコツをご紹介します。
ゆっくり・短く・わかりやすく話す/ゆっくり聞く
認知症がある親には、早口で長い説明は混乱の原因になります。話すときのポイントは「急がないこと」です。聞こえやすさを意識して、一文を短く、ゆっくりと、穏やかな声で話しましょう。
また、一方的に話し過ぎると、親の気持ちを聞く機会を失ってしまいます。親から言葉が出てくるまで、待つ姿勢も大切です。「ゆっくり伝える」「ゆっくり聞く」ことで、安心感のあるコミュニケーションが生まれます。
否定せず、受け止める「そうなんだね」を大切に
認知症がある親が事実と異なることを言ったとき、「違うでしょ!」と正すと、不安や混乱が強まってしまいます。大切なのは、内容の正しさよりも気持ちを受け止めることです。
まずは「そうなんだね」と共感を示すと、親は安心し、落ち着きやすくなります。無理に理解を求めたり、説得しようとしない姿勢も大切です。「親の感じている世界がある」と捉え、寄り添う気持ちが、スムーズな関係づくりにつながります。
親の「好きなこと」や「得意な話題」を活用する
認知症があっても、「心が動く瞬間」は活きています。親が安心できるテーマをきっかけに会話を広げてみましょう。例えば、「昔の思い出」といった話題がおすすめです。
- 昔好きだった歌
- 思い出の旅行の話
- よく作っていた料理
- 趣味の話題 など
一緒に、美味しいものを食べたり、写真を眺めたりしながらゆっくり過ごす時間は、安心感につながり、コミュニケーションもより穏やかになります。また、理解を深めたり話を進展させたりするより、「同じ気持ちを共有する」ことがポイントです。
認知症がある親の、よくある困りごとと接し方のポイント
認知症がある親との生活では、ひとり歩きや金銭管理、感情の変化など、戸惑う場面が少なくありません。
ここでは、よくある困りごとに対して、安心して向き合うための接し方のポイントを見ていきましょう。
ひとり歩きへの対応
認知症がある親がひとりで外に出て行ってしまうと、行方不明になるケースもあるため、まずは安全の確保が大切です。理想は一緒に出かけることですが、いつもそうできるわけではなく、知らない間に出かけてしまう場合もあります。
スマートフォンのGPS機能や、地域の「見守り連携」サービスがあれば活用しましょう。衣類や持ち物の目立つ場所にシールやタグを付ける場合は、ご本人の気持ちや尊厳に配慮する必要があります。
金銭管理の工夫
金銭管理では「お金を全部取り上げる」のではなく、親の気持ちを守る工夫が大切です。
例えば、少額のお小遣いを入れた財布を用意する、ご家族が見守れる口座を利用するなど、トラブルを防ぎながら「自分で管理ができている感覚」を保つ方法を取り入れましょう。親の気持ちを尊重しつつ、現実的な仕組みを整えることがポイントです。
怒りっぽくなったとき
急に怒りっぽくなったときは、すべてを「認知症のせい」と決めつけないようにしましょう。ご本人の体調や生活上の変化も考える必要があります。
例えば、薬の副作用や体調不良(便秘など)が影響している場合もあるため、専門医に「最近こういうことがあって」と、ありのままを伝えて相談しましょう。状況全体を具体的に理解してもらうことが、適切な対処につながります。
幻覚・幻聴への対応
幻覚・幻聴があるときは、その内容を強く否定したり、無理に話を合わせようとしたりせず、ご本人の「怖い」「不安だ」という感情を受け止め、「私がいるから大丈夫だよ」と安心につながる声かけを心がけましょう。
対策としては、部屋を明るくする、生活リズムを整えるなど環境を変えるという方法もあります。必要に応じて医師に相談しつつ、薬が増えるだけにならないよう、専門医と一緒に見極めていきましょう。
手づかみ食べ
手づかみで食べることは、箸やスプーンの使用が難しくなることで見られる、認知症の進行にともなってよく見られる自然な変化の一つです。無理にやめさせようとせず、おむすびやスティック状のおかずなど「手で食べやすい形」にすると、落ち着いて食事ができることがあります。
認知症の進行にともなう自然な変化であり、無理に直そうとするのではなく、「今できる食べ方」を認めて寄り添う姿勢が、ご本人の安心と自尊心を守ることにつながります。
介護疲れを軽減するために|介護サービスの活用
介護はご家族だけが背負うものではありません。ご家族の中だけで、あるいは一人きりで抱え込むと、心も体も疲れ切ってしまい、親との関係にも影響します。まずは、相談先を複数確保し、介護で倒れてしまう前に話を聞いてもらいましょう。
そして、介護サービスの利用も検討しましょう。施設の利用は「親と自分の両方を支えるための選択」です。デイサービスやショートステイ、必要に応じて介護施設への入居など、ケアマネジャーに相談しながら、無理のない形でサポートを取り入れましょう。
介護施設に入居すれば、専門スタッフによる24時間の見守りが受けられるため、安心感があります。
ご家族は「介護する人」から「見守り、寄り添う人」へと役割を変え、穏やかな気持ちで面会などができます。介護のバトンをご家族から施設に渡すことで、自分の生活と心の余裕を守りながら、親との良い関係を長く続けていくことができるでしょう。
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認知症でも入れる4つの施設。施設の探し方や施設を選ぶときに重視したいポイントとは
安心な暮らしを支えるソラストのグループホーム
ご家族にとって、グループホームを検討することは大きな決断です。「環境に馴染めるだろうか」「きちんと見守ってもらえるだろうか」と、不安を感じるのは自然なことです。
ここでは、ソラストのグループホームの特徴と代表的な施設をご紹介します。
ソラストのグループホームの特徴
「施設に入るのは心配」「知らない場所で大丈夫かな?」といった不安な気持ちは自然なものです。ソラストのグループホームでは、少人数の落ち着いた環境と、認知症ケアに精通したスタッフがそばにいて、ご利用者様のペースを尊重しながら日々の生活をサポートすることを心がけています。
【主な特徴】
- 認知症介護のエキスパートを育成する社内独自の養成研修制度を導入。認知症ケアの研修を受けた専門スタッフが24時間の見守りを行っています。
- 少人数(1ユニット9名)のアットホームな生活環境の中で、我が家のように明るく過ごせる雰囲気づくりを大切にし、ご利用者様に寄り添うサポートを心がけています。
- ご利用者様の個性を尊重し、気持ちに寄り添いながら、その日そのときの状態に応じたサポートを大切にしています。
グループホームソラストももか太子
ソラストが運営するグループホームソラストももか太子は、日々の生活の中に、自然な交流や笑顔が生まれる環境づくりに力を入れています。地域社会ともつながりながら、ご利用者様が安心して過ごせる“居場所”づくりを目指しています。
【主な特徴】
- 互いに声をかけ合える関係性の中で、「介護する・される」という関係を超えた“水平”なつながりを大切にしています。
- 季節ごとのイベントやレクリエーションにも力を入れています。過去には、ウナギのつかみ取りや、スタッフがバーテンダーを務めるスナックイベントも開催しました。
- 豆から淹れるコーヒーは「ももか」ならでは。地域の認知症カフェとも連携し、安心して集える“駆け込み寺”のような存在を目指しています。
■施設詳細は以下のページをご覧ください。
グループホームソラストももか太子
認知症がある親との接し方は「目線を合わせた丁寧なかかわり」を大切に
認知症がある親との接し方に、「これが正解」というかたちはありません。親が「今できていること」に目を向け、その人らしさを大切にしながら向き合っていくことが理想です。
とはいえ、いつも完璧に接することは難しいものです。ときには怒ったり、あとから「言い過ぎたな」と感じて謝ったりしながら、少しずつ親との関係を育てていきましょう。
つらいときやストレスがたまったときは、一人で抱え込まなくて大丈夫です。相談先や介護サービスの力も借りながら、親と子のどちらにとっても、安心して暮らしていける関係づくりを進めていきましょう。
この記事の監修担当をご紹介します。
施設ケアマネジャー
上埜 美恵子
兵庫県出身。京都芸術短期大学を卒業後、転職を経て特別養護老人ホームに勤務し、認知症ケアに携わりました。
現在は、グループホームソラストももか太子でケアマネジャーとして従事する傍ら、兵庫県認知症介護指導者としても活動しています。
「ケアの良し悪しは、認知症がある方の表情を見ればわかる」という強い信念のもと、法定研修の講師なども務め、現場を何よりも大切にしています。
2023年にはクラウドファンディングを経て商業出版した絵本「いっしょにあるく」の作者としても活動中です。
【保有資格】 介護福祉士、介護支援専門員、兵庫県認知症介護指導者、DCM基礎ユーザー、認知症カフェモデレーター
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