2026.02.02
⾼齢者の正しい杖の選び⽅は?種類・⻑さ・介護保険までプロが解説
高齢の親の歩き方がおぼつかなく、今にも転びそうに見えると、「何とかしてあげたい」と心配になるものです。そんなときに役立つのが「杖」です。杖は歩行を安定させて、足腰の負担を軽減する役割をしてくれます。
とはいえ、杖にはさまざまな種類があり、長さやグリップの形もいろいろ。使いやすい杖の選び方がわからない方も多いでしょう。
そこで今回は、高齢者に合った杖の選び方や長さ、介護保険を使った購入・レンタルのポイントまで、介護のプロがわかりやすくご紹介します。
杖の役割と高齢者にとっての必要性とは?

高齢になると筋力やバランス機能が低下し、歩行が不安定になりがちです。杖は単にからだを支えるだけでなく、「歩行の安定」「足腰の負荷軽減」「外出時の安心感」といった重要な役割を果たします。
はじめに、転倒を防ぐための大切なパートナー「杖」について、その必要性を解説します。
歩行を安定させる
杖の役割は歩行中のふらつきを抑え、転倒リスクを大きく減らすことです。地面に接する点が両足と杖の3点になるため、からだのバランスがとりやすくなり、歩行の不安定さを補ってくれます。
「転ばぬ先の杖」という言葉がありますが、杖は転倒を未然に防ぐ補助具なのです。高齢者自身の歩行が安定し、移動が楽になることで、見守るご家族の安心にもつながります。
足腰の負担を軽減する
高齢者の歩行姿勢は「前傾して足が上がっていない」場合が多く見られます。これは、骨や筋肉の状態が変化し、転倒しやすくなっている状態です。
からだが前傾しているため、歩行時には負担(体重)が膝にかかりますが、杖を持てば杖に負担を分散でき、足も上がりやすくなります。また、歩き疲れて立ち止まったときには、杖を支えにからだを伸ばして一息つけるという利点があります。
歩行時の負担が分散されて歩くことが楽になると、外出の機会が増え筋力維持にもつながるでしょう。
安心感・自信を持って外出できる
杖があると、足腰への負担を和らげるだけでなく、「支えがある」という安心感を持てることが大きなメリットです。「転ぶのではないか?」という不安が軽減されると、歩行への自信を取り戻し、外出の機会が増えていきます。
高齢者にとって、外に出て買い物や散歩,人との交流を楽しむことは、心の健康にもつながる喜びです。杖は高齢者が前向きに日常生活を送るための大切なパートナーといえるでしょう。
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代表的な杖の種類と特徴

杖にはさまざまな種類があり、それぞれに特徴があります。からだの状態や利用シーンに合わせて最適な杖を選ぶために、まずは代表的な杖の種類を知っておきましょう。
一本杖(T字杖・ポール杖):最も一般的で種類が豊富なタイプ
一本杖は「地面に接する杖先が1点」の最も基本的な杖です。比較的、歩行が安定している方が「転ばぬ先の杖」として補助的に使うのに適しています。
デザインや素材の種類も豊富で、主なグリップの形状によって次のように分けられます。
【グリップの形状別】
-
T字杖
T字杖は、アルファベットの「T」の形をした主流なタイプです。手のひらで体重をかけやすく、しっかりと握れるのが特徴です。高齢者の歩行を補助する目的で、一般的によく見かける杖といえるでしょう。 - ポール杖
グリップがまっすぐか、それに近いシンプルな形状の杖です。デザイン性が高く、おしゃれなものも多いですが、T字杖に比べて体重を支えるのにはあまり向いていません。主に、歩行リズムを整えたり、軽いバランス補助として使われます。
また、機能で見ると、主に次のように分けられます。
【シャフト(支柱)の機能別】
- 固定タイプ
杖の長さを変えられないシンプルな杖です。軽くて丈夫なものが多いですが、使う人の身長などに合った適切な長さを選ぶ必要があります。 - 折りたたみタイプ
折りたたんでコンパクトに収納できる杖です。使わないときにはバッグなどに入れておけるので、旅行や通院時、公共交通機関での移動が多い方には便利です。 - 伸縮タイプ
ボタンやネジで杖の長さを調節できる杖です。使う人の身長などに合わせて細かく調整できるため、からだにぴったり合わせやすいのが特徴です。
多点杖(4点杖など):体重をしっかり支える安定性が高いタイプ
多点杖は杖先が3点か4点に分岐しており、非常に安定性の高い杖です。足腰が弱い方が、体重を支えやすいのが特徴です。最近は長さ調節ができるタイプもあるため、身体に合わせて調節するとより安定して利用できます。また、自立するため杖自体が倒れず、置く際にも便利です。
ただし、重いため長距離の歩行には不向きで、段差や傾斜、凸凹した地面ではかえって不安定になる点に注意が必要です。
ロフストランドクラッチ、松葉杖など:リハビリやケガの際に使うタイプ
介護保険を利用する際に選べる杖の中には、ロフストランドクラッチや松葉杖などがあります。松葉杖は下肢のケガや手術後に使用されることが多く、脇で体重を支えます。ロフストランドクラッチ、カナディアンクラッチ、プラットホームクラッチは腕で体重を支える杖です。
ただこれらの杖は、特定の身体状態の方が、医師や理学療法士の指示のもとで使用することが多い杖です。主に体力や肺活量がある若い方、リハビリ中の方、手の指に力が入らずグリップする力が弱い方などです。
そのため、一般的な高齢者の日常的な歩行補助としては最初に選ばれることは少ないでしょう。
二本杖(ダブルステッキ):ウォーキングに使われ補助には不向きなタイプ
二本杖は、左右のバランスをとりながら歩けるため、全身を使ったウォーキング運動として活用されることが多い杖です。
ただし、両手がふさがるため転倒時にとっさに手をつけず、高齢者の日常の歩行補助には不向きです。もし、杖1本では不安という場合は、より安定性の高い歩行器が選択肢の一つになります。ご本人の状況によっては専門家と相談の上で、ほかの福祉用具を検討することもあります。
介護保険で杖は購入できる?レンタルできる?

杖は介護保険の対象になる杖とならない杖があります。条件や対象の杖を把握しておけば、費用を抑えて利用できます。
ここでは、介護保険で購入・レンタルできる杖の種類や注意点について見ていきましょう。
介護保険の対象となる「歩行補助つえ」と対象外の杖
介護保険で購入またはレンタルの対象となる杖は、歩行をしっかり補助できる多点杖など、介護保険制度で指定されている「歩行補助つえ」です。一般的によく使われているT字杖は、介護保険では購入もレンタルも対象外です。
なお、以前はレンタル(貸与)のみが対象でしたが、2024年4月からは、ご利用者様がレンタルか購入かを選べる制度が導入されました。
<介護保険で購入またはレンタル対象・対象外の杖一覧>
| 介護保険給付 | 杖 |
|---|---|
| 給付対象 | 多点杖、ロフストランドクラッチ、カナディアンクラッチ、プラットホームクラッチ、松葉杖(レンタルのみ) |
| 対象外 | ポール杖・T字杖・折りたたみ杖・伸縮式の一本杖、二本杖など |
※参考:
福祉用具・住宅改修|厚生労働省
福祉用具貸与と特定福祉用具販売の選択制について(厚生労働省発表資料)(PDF)
自己負担額と利用の流れ
介護保険の対象となる多点杖などの「歩行補助つえ」は、負担割合に応じて1〜3割負担でレンタルまたは購入ができます。一方、T字杖や折りたたみ杖など、介護保険の給付対象外の杖は実費購入となります。
杖のレンタルや購入に介護保険を利用する場合は、まずはケアマネジャーや福祉用具専門相談員を通じて、指定のカタログに掲載された製品から選ぶのが一般的です。依頼すれば、担当者がサンプルを持ってきてくれるので、実際に試しながら高さ調節や使い方のアドバイスを受けましょう。
介護保険で屋外用と室内用の「杖2本レンタル・購入」は可能?
屋外用と室内用の2本(複数)の杖のレンタル・購入することは、介護保険上では可能です。ただし、「2本目(複数)の杖が必要である」と市町村に認めてもらう必要があります。
まずはケアマネジャーに相談し、外出用と室内用で必要な杖の機能が異なるなど、ケアプランに「2本が必要な理由」を記載してもらえるか確認してみましょう。
【関連記事】
⾼齢の親のリハビリはどうする?介護保険で使えるサービス・施設の選び⽅
高齢者向けの杖の正しい選び方

杖を選ぶときは見た目や価格だけでなく、からだの状態や使用目的に合っているかを重視しましょう。握りやすさや長さ、安定性などを確認し、実際に試してから選ぶと安心です。
もし、杖選びで迷ったときや初めて購入するときは、福祉用具専門相談員や理学療法士への相談が最も確実です。ここでは、一般的な杖選びのポイントをご紹介します。
【ポイント1】軽さと丈夫さ
杖は毎日使うものだからこそ、軽くて丈夫な素材を選ぶことが大切です。いくつか候補がある場合は、実際に手に持ってみて以下の点を確認してみましょう。
- 素材の軽さ
- 支柱や接合部分の強度
- 取り扱いやすい重さのバランス
一般的に重い杖は安定性がありますが、一方で長時間使うと疲れやすくなります。材質がアルミやカーボン製の杖なら軽いため、扱いやすいといえます。また、長く安心して使うために、強度がしっかりしていることも重要です。
こうした点を総合的に判断して、バランスのとれたものを選ぶとよいでしょう。
【ポイント2】グリップの形と握りやすさ
歩行の安定には握りやすいグリップが不可欠です。手の大きさや握力に合っているか、長時間握っても手が痛くならないかがポイントです。
グリップの素材によっても感触は変わります。木製は温かみのある上品な質感が特徴で、ゴムやジェル入りグリップは滑りにくく手に優しい素材です。
日常使いでは、手を上からかぶせて持てるT字杖が握りやすく一般的です。
【ポイント3】身長に合った長さの決め方
杖の長さは非常に重要です。長さが合っていないと、歩きにくいだけでなく、姿勢が悪くなり膝や腰に痛みが出ることもあります。
基本の杖の長さの目安ですが、例えば、以下の方法で確認できます。
- 立った状態で腕を自然に下ろす
- 杖のグリップ上端が、手首の骨が出ている部分の高さか
- その長さで杖を握ると、肘が軽く曲がる(30度ほど)状態で身体的負担が少ない
伸縮式の杖の場合は、身長に合わせて細かく調節ができ、自分に合った高さに設定することで、より安定した歩行ができます。
【ポイント4】利用シーンや、からだの状態に合わせる
杖は、使う場所や、からだの状態に合わせて選ぶことが大切です。例えば、主な利用シーンに合った杖をご紹介します。
- 外出が多い方
折りたたみ杖や伸縮杖がコンパクトになるため、持ち運びに便利です。 - 室内の移動が不安な方
接地面が広い多点杖を使うと、安定感があり安心です。 - イスに座ったり立ったりする際の補助にしたい方
安定性が高い多点杖がおすすめです。杖が自立するので、使わないときはイスの横に立てておけます。
杖を使用する際の注意点

杖は正しく使うことで安全に歩けますが、注意点を理解しておくことで、より安全性が高くなります。
- 杖先のゴムは定期的に交換を
杖先のゴムは、接地部分がすり減ると滑りやすくなり、転倒の原因になります。月に一度は点検・確認して早めに交換しましょう。交換用ゴムは福祉用具店やホームセンターで購入できます。 - 杖を立てかける際は慎重に
杖が倒れると、拾おうとしたときにバランスを崩して転倒する危険があります。杖ホルダーやストラップなどのアクセサリーを活用すると、杖が倒れるのを防げます。アクセサリーは福祉用具店や日用品店などで購入できます。 - 長時間使うと手が痛くなる場合
グリップカバーを取り付けてみましょう。握った際の手へのあたりがやわらかくなり、滑り止めの役割も果たします。
杖の正しい使い方と歩行方法

杖を持っていても、正しく使えていない方は意外と多いものです。間違った使い方では効果が半減し、かえって危険なこともあります。
ここでは、杖の正しい使い方や歩き方の基本をわかりやすくご紹介します。
T字杖の基本的な使い方
T字杖を使うときは、痛みのある足と反対側の手で持つのが基本です。歩く際は、杖と痛みのある足を同時に前に出し、からだのやや前方に杖をつくとバランスがとりやすくなります。
杖に軽く体重をかけながら、もう一方の足でからだを支えるように歩くと安定します。購入時に、専門スタッフの指導を受けながら練習するのもおすすめです。
多点杖を使った歩き方
多点杖を持って歩くときは、杖をしっかり持ち上げて水平に置くよう意識します。足と杖の動きを「①杖→②痛い足→③もう一方の足」とリズムをとれば、スムーズに歩けます。
基本的な使い方はT字杖と似ていますが、多点杖は杖がないと歩行が難しい方に向いているため、専門家から使い方を事前に教えてもらって練習をするなど、慎重に使い始めるのがポイントです。
階段や段差を歩くコツ
階段や段差を上り下りするときは、足の出し方に注意が必要です。
上るときは、痛みのない足から先に上げ、その後に杖と痛い足を動かします。下りるときは、杖と痛い足を同時に先に下ろし、最後に痛みのない足を下ろします。必ず手すりも併用し、からだをしっかり支えることが大切です。
杖はどこで購入・レンタルできる?

杖は、通販や量販店でも購入できますが、介護保険を利用する場合は、専門相談員を通す必要があります。ここでは、杖の購入・レンタル先と相談先をご紹介します。
福祉用品店・介護ショップ・通販・量販店
杖の購入やレンタルは、目的やサポート体制に合わせて選ぶのが安心です。初めて杖を購入する方は、自分に合った杖を選べる専門店がおすすめです。
- 福祉用品店・介護ショップ
専門の相談員が常駐しており、介護保険を使った購入やレンタルが可能です。ケアマネジャーを通して依頼すれば、自宅まで複数の杖を持ってきてくれて、使い勝手を試せることもあります。 - ネット通販・量販店
種類が豊富で価格も幅広く、購入しやすいといえます。ただし、専門家からのアドバイスは受けられないことがほとんどで、通販では実際の握り心地や高さが確認できないというデメリットもあります。
高齢者の杖選びは専門相談員や理学療法士への相談を
杖選びに迷ったときや初めて杖を選ぶときは、福祉用具専門相談員やリハビリを担当している理学療法士に相談するのが安心です。
ご本人のからだや歩行の状態を確認したうえで、最適な杖の種類や長さを提案してもらえ、より安全で快適に使える杖を選べます。
安心・充実を目指すソラストのデイサービス
高齢者の杖の利用は歩行の安定に役立つ一方で、歩く力そのものを維持・向上させるためには、継続的なリハビリも欠かせません。
そこで活用したいのが、リハビリや入浴、趣味活動などを通じて、毎日の暮らしにメリハリをつくるデイサービスです。ここでは、ソラストのデイサービスの特徴と、実際の施設の一例をご紹介します。
ソラストのデイサービスの特徴
ソラストのデイサービスは、ご利用者様の「こころ・からだ・環境」に寄り添い、充実した一日のご提供を目指しています。
日々の体調や気分の変化に合わせて無理なく参加できるよう、専門職が連携して支援し、「できること」を伸ばして「やりたいこと」を続けられる環境づくりにも力を入れています。
【主な特徴】
- ご本人の向上心と積極性を引き出し、生きがいにつながる過ごし方をご提案します。
- 一人一人の自立した日常生活につながる機能訓練やレクリエーションを実施しています。
- 福祉用具レンタル・販売では、専門の相談員が暮らしやご要望に合った最適な用具をご提案します。
■ソラストの福祉用具レンタル・販売については以下のページをご覧ください。
ソラストの介護サービス「福祉用具レンタル・販売」
ソラストの介護サービス「居宅介護支援」
デイサービスソラスト清須(通所)

ソラストが運営するデイサービスソラスト清須は、心身機能の維持・回復を目指し、安心して過ごせる居心地の良い環境が特徴です。コミュニケーションを大切にし、ご利用者様が元気に、笑顔で過ごしていただけるようサポートします。
【特徴】
- 理学療法士・作業療法士が在籍し、専門的な運動指導やリハビリを実施しています。
- 季節行事や外出イベント、季節を楽しめるおやつの日など、日々の楽しみを取り入れています。
- 食事前の口腔体操や食後の口腔ケアなど、誤嚥予防の取り組みも行っています。
■施設詳細は以下のページをご覧ください。
デイサービスソラスト清須(通所一般)
高齢者に合った杖を選んで、安心できる歩行を

杖は、転倒予防や歩行時のからだの負担軽減に欠かせない大切な介護用品です。T字杖や多点杖など、それぞれの種類や特徴を理解し、ご本人のからだの状態に合った長さやグリップを選ぶことで、安全で快適な歩行に役立ちます。
介護保険を活用できる杖であれば、購入やレンタルの費用負担も抑えられます。福祉用具専門相談員や理学療法士に相談しながら、自分に合った杖を選び、安心して外出を楽しみましょう。
この記事の監修担当をご紹介します。
デイサービスソラスト清須 センター長兼管理者
中村 博一
学生の時の職場体験をきっかけにリハビリに興味を持ち、理学療法士の資格を取得。
資格取得後は、病院でのリハビリ業務、通所介護での管理者を経験し、ソラストに入社しました。
現在は、通所介護の管理者兼センター長として複数の事業所の運営に携わっています。
「利用者様を笑顔にしたい」という思いを心掛けながら日々奮闘しております。サービスを通じて、皆様に笑顔になっていただけることが、私たちのモチベーションにもなりますので、質の高いサービスを提供できるよう尽力しています。
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